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 寒冷地向けに設計された建物をそのまま温暖な土地に建てたらどんな問題が起きるでしょうか? 冬には窓を開けて換気しなければならないほど暖かすぎる程度のことで済むかもしれませんが、夏には普通の家で快適に暮らせる日でも熱が篭るためいつも冷房をしていないと快適な家にはならないかもしれません。

 ヨーロッパの中にも地中海に面したフランスやスペインの一部には冬には暖房が不要で夏には冷房が欠かせない日本でいえば沖縄のような地方があります。ほかにも暖房も冷房も必要な地域があります。

 これらの地域では冷房時に、暖房と同じように固定した冷房設定温度を基準にすると、内部発熱で上昇した室温を下げるために暖房シーズンが終って暫くすると冷房を使い続けなくてはならなくなります。
 夏の湿度が低く、気温もそれほど高くないヨーロッパでは、北欧やドイツのパッシブハウスの考え方で家を造ると冷房負荷が大きくなるので、温暖な地域に適した寒冷地とは異なるパッシブハウスの開発が進められています。

http://www.passive-on.org/CD/1.%20Technical%20Guidelines/Part%201/Part%201%20-%20English.pdf 参照

 これら温暖な地域では、寒冷地と異なる次のような基準を元にパッシブハウスの開発が進められています。
温暖な地域でのパッシブハウスの要件
項      目
条          件
年間暖房エネルギー  15KWH/m・a以下
年間冷房エネルギー  15KWH/m・a以下
1次エネルギー換算総エネルギー消費 120KWH/m・a以下
気密性 0.6回換気/h 相当量(冬季の設計外気温が0℃
以上の地域は1.0回換気/h 相当量)以下 
(EN13829に基づく)
冬季快適性 上記エネルギー使用枠内で、居室温度20℃を維持
夏季快適性 居室はEN15251に定められた快適域にあること。
機械式冷房(註:機械換気を含む)を行なう場合
には、居室温度は26℃以下であること。

 寒冷地で使われるパッシブハウス技術のいくつかは温暖な地域ではほとんど使われません。例えば熱交換換気装置などは夏に冷房を必要とする地域では室温が上昇しすぎて適当ではないと考えられているようです。
 サッシやガラスをはじめ、壁や屋根の断熱性能も寒冷地ほどのものは必要ありませんし、熱交換換気が温暖な地域で使われることもありません。冬の設計外気温度が0℃以上あれば気密性能に対する規定も緩やかになっています。

 中欧・南欧に建てるパッシブハウスの夏季快適性を決めているEN1525は、「適応快適性」と呼ばれる理論に基づいています。
 体感温度は温度湿度以外にも風速や輻射熱の影響を受けます。温度と湿度だけで快適性を判断するときは、風速や輻射による体感温度の増減がないものとして快適さを判断しています。風速は体感温度を低くするほうに働きますから、暖房では風速を不快感を感じない程度に小さくするわけですが、冷房では不快な風速にならない限り室温に応じて風速を大きくした方が冷房なしに快適さを感じることができる訳です。
 断熱性能を高めるほど内部発熱によって室温が上昇しやすくなり、温暖な地方では冷房を必要とする頻度が著しく増加します。

 従って、ヨーロッパでも比較的温暖なフランスやイギリスよりも南の地域では断熱を強化して熱損失を減らすことばかりでなく、冬のダイレクトゲイン(日射エネルギー)を取り入れることも考えなければなりません。
 また、夏にも室温が上がれば冷房すると考えるだけでなく、窓を開けて風を感じる、夜の冷気を取り入れて建物を冷やすなど年間空調エネルギーを減らす工夫も有益だと考えられるようになりました。

 日本でパッシブハウスを造ろうとするときに参考になるのは暖房ばかりでなく、時には冷房も必要なフランスやスペインなどで検討されているパッシブハウスの考え方を良く知る必要があります。
 


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